あまりの部屋の汚さに、もしやこの混沌は自分の精神状態を反映しているのでは、と不安になり、掃除をした。机の裏側にたまった煙草の空き箱をごそっと掻きだすと、いっしょに大きな人間の耳がぽろりと眼前にこぼれ落ちてきた。ひとさまの耳を削いで蒐集する奇癖がじぶんにはあったのか、とおもわずじぶん自身に驚かされてしまったが、半年ぐらいまえに、衝動的に「ガチャガチャ」をしたくなったときに当った、もはや過去のひととなったマギー審司の「でっかくなっちゃった」というギャグ手品で使用される、文字どおりでっかい耳であることをほどなく想いだした。マギー審司の小道具ごときに驚かされるとは不覚であったが、おかげさまで、部屋はいくらかきれいになった。