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ジャン・ヴァール『実存主義入門(Les philosophies de l'existence)』
二部構成。第一部では、哲学史家としても名高い著者による実存哲学の形成史と発展史。キルケゴールのヘーゲルとの格闘に始まり、ヤスパース、ハイデガー、マルセルと進み、サルトル、メルロ=ポンティまでの流れを明快に整理していてわかりやすい。第二部では、超越、投企、未来、可能、他者、存在、不安、無…といった実存哲学における主要概念を網羅的に解説。
公平な学説史の紹介という体裁をとりつつも、入門書の域をこえて、『存在と時間』ではごっそりと削ぎ落とされてしまった実存と宗教的超越という問題の消息を、キェルケゴールに立ちかえりながらたどりなおすことに主眼をおく、著者自身の志向を反映させた一書となっている。